i-LUMINOUS
株式会社アイ・ルミナス
業務での活用例

社内AIが「見えてはいけない資料」を答える前に 共有設定の点検から始める

社内の文書を探して答えるAIは、本人が見られる範囲だけを使います。だからこそ、共有設定のずれがそのまま表に出ます。導入前に確かめたい順番を整理します。

社内のファイルやメールを探して、要約や回答を返してくれるAI。Microsoft 365 Copilotのような製品のほか、社内文書を読み込ませた自社専用のAI検索を作る会社も増えてきました。

こうした仕組みでよく聞く説明があります。「AIは、その人がもともと見られる資料しか使いません」というものです。

これは正しい説明です。ただ、ここに落とし穴があります。

問題はAIではなく、もともとの共有設定

多くの会社の共有フォルダやファイル共有サービスには、こんな状態が眠っています。

  • 社内の全員に共有されたままの、人事や評価の資料
  • 誰でも開けるリンクで配った、昔のプロジェクト資料
  • 担当者が異動して、持ち主がいなくなったフォルダ
  • 親フォルダは制限しているのに、下の階層だけ設定が外れている

これまでは、誰も探しに行かないので問題になりませんでした。置き場所を知らなければ、見つけようがなかったからです。

検索して答えてくれるAIは、この見つけにくさをなくします。権限の上では見られる資料を、質問ひとつで要約して出してきます。AIがルールを破ったわけではありません。共有設定のずれが、急に表に出てくるのです。

【判断の材料】Microsoftは、Copilotが「利用者がすでにアクセス権を持つデータ」をもとに回答すると説明しています。そのうえで、導入の手引きの3本柱の1つ目に「過剰な共有の是正」を置いています。また、SharePointの共有設定は、初期状態では最も緩い設定になっていると明記しています。

導入前に確かめたい順番

すべての設定を直し終わるまで待っていると、いつまでも導入できません。現実的には、次の順番で進めるのがおすすめです。

1.危ない場所を先に見つける

全部を一度に見直すのは無理があります。まずは、次のような場所を洗い出します。

  • 全社公開になっている
  • 誰でも開けるリンクがある
  • 持ち主がいない、または長く使われていない
  • 人事、給与、契約、顧客情報を含む

いくつかの条件が重なっている場所ほど、危険が大きいと考えます。大手のサービスには、こうした場所を一覧にする管理機能があります。情シスの方は、まず管理画面を確認してみてください。

2.直すまでの間は、AIの検索対象から外す

設定の見直しには時間がかかります。その間は、重要なサイトやフォルダをAIや全社検索に出てこないようにしておく、という一時的な守り方があります。

3.持ち主に見直してもらう

情シスだけでは判断しきれない資料は、フォルダの持ち主に「この共有範囲で合っていますか」と確認してもらいます。持ち主がいない場所は、まず持ち主を決めるところからです。

4.これから作る場所は、最初から絞る

新しいフォルダやサイトを作るときの初期設定を、関係者だけにしておきます。ここを決めておかないと、直したそばからまた広がります。

【判断の材料】Microsoft 365には、サイトの閲覧権限は変えずに、Copilotや全社検索に出てこなくする設定(Restricted Content Discovery)があります。Microsoftの手引きでは、危ない場所を見つける、直すまでCopilotから外す、権限を直すという順番を示しています。あわせて、重要なサイトは作る時点でアクセスを絞ること、全社向けの共有や誰でも開けるリンクを制限することを勧めています。これらの管理機能は、Copilotを契約していれば使えます。

情シスの担当者がいない会社では、この順番を誰が受け持つかを先に決めておきます。外部の保守会社に頼んでいる場合は、導入の前に点検をお願いしておくと安心です。

自社でAI検索を作る場合は、もう一段注意が要る

市販の製品ではなく、社内文書を読み込ませて自社用のAI検索を作る場合は、さらに気をつけたい点があります。

文書はAIが扱いやすい小さな断片に分けて保存されます。このとき、元のファイルに付いていた「誰が見てよいか」の情報が抜け落ちやすいのです。そうなると、元の資料には鍵がかかっているのに、AI検索からは中身が読めてしまいます。

Webの安全性に関する国際的なコミュニティOWASPも、この点を注意しています。要点は次の3つです。

  • 断片ひとつひとつに、誰が見てよいかの情報を付けて保存する
  • 権限の確認は、取り込むときだけでなく、検索するたびに行う
  • 見せてはいけない資料は、AIに指示して守らせるのではなく、AIに渡す前の段階で弾く

最後の点は特に大事です。AIへのお願いは、守られないことがあります。見せてはいけないものは、そもそもAIの手元に届かない作りにしておく。これが基本です。

【判断の材料】OWASPは、AI検索の安全な作り方をまとめた資料で、権限の情報を断片ごとに持たせること、検索のたびに確認すること、アクセスの制御をAIに任せないことを挙げています。AIを使ったアプリの主な危険をまとめた一覧でも、アクセス制御の不備による情報漏えいを取り上げています。

導入を決める前に、3つだけ確認を

社内のデータを使うAIは、会社の中で情報が届くまでの道のりを一気に短くします。便利さの裏返しで、これまで目立たなかった共有設定のずれが、そのまま見えるようになります。

導入を決める前に、次の3つだけでも情シスと各部署で確認しておくと、導入後に慌てずに済みます。

  • 全社公開や、誰でも開けるリンクになっている重要な資料はないか
  • 持ち主のいないフォルダはないか
  • 直すまでの間、AIの検索対象から外す手段はあるか

当社では、社内AIを入れる前の点検の進め方から、社内ルールの決め方まで、無料でご相談をお受けしています。「うちの共有設定はどこから見ればいいか」を一緒に整理するところからでも、お気軽にお声がけください。

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